エサレン研究所はアメリカカリフォルニア州のビッグサーの地で人間の潜在的可能性を探求・実践する滞在型宿泊施設として1962年に誕生しました。
きっかけはスタンフォード大学の卒業生同士だったリチャード・プライスとマイケルマーフィが出会ったことに始まります。
当時のアメリカはジョンFケネディが大統領に選出され、新たな時代の幕開けを感じさせるエネルギーが溢れていました。そうした時代の中でイギリス人作家オルダス・ハックスレーがカリフォルニアの各地の大学で講演を行いました。そのテーマは「人間の潜在的可能性」についてのものでした。
この講演に感銘を受けたリチャード・プライスはマイケル・マーフィと共にマーフィの家族の所有地であったビッグサー温泉にセミナーセンターを設立することを志し、ひいてはヒューマンポテンシャルムーブメント(人間の潜在的能力開発運動)を生み出すきっかけとなりました。
そして、その地に暮らしていたネイティブ・アメリカンの部族の名前から「エサレン研究所」と命名されました。
2人はすぐに各地から著名な先駆者達を招待し、セミナーを開催しました。徐々に動きは広がり、多くの哲学者や文学者、心理療法家、身体技法研究家、アーティストが訪れ、あらゆる角度から人間の可能性を探る試みが展開されました。この体験中心のワークショップはエサレン研究所の大きな特徴となりました。
ゲシュタルト療法の創始者、フリッツパールズ、人間性心理学とトランスパーソナル心理学の創始者であるアブラハム・マズロー、センサリー・アウェアネスのシャーロット・セルバー、ロルフィングのアイダ・ロルフ、フェルデンクライスのモーシェ・フェルデンクライス、トレガーワークのミルトン・トレガーなど各種ボディワークの創始者たちが相次いで滞在し、さまざまな実験的・体験的ワークショップが繰り広げられようになりました。
この時代の西海岸では東洋的な心身一如の考えが広がっており、それはエサレン研究所の基本的な思想となり、瞑想や禅、太極拳、合気道などの研究者達も研究所に滞在し、互いに意見交換をしました。
そうしてエサレン研究所を通して新しい心理療法やボディワークなどの手法や理論が全米へ、そして世界中に紹介されていきました。
現在も哲学・心理学・ヨガ・音楽・アートなど年間500種類ものワークショップセミナーが開催され、非営利の教育センターとして知られており、毎年何万人もの人が訪れています。
研究所があるビッグサーは眼前に太平洋が広がる風光明媚な場所でアメリカでは珍しく温泉が湧いています。滞在者達は海を眺めながら温泉に入ったり、思い思いに交流を深めながら、短期から長期の滞在を楽しんでいます。